勤労世代の日本人男性における就業状況と循環器疾患リスクの関連

2019.06.11 [プレスリリース]

小企業の正規雇用従業員男性は大企業・官公庁と比べて循環器疾患死亡リスクが上昇

(NIPPON DATA90 研究の結果より)

 生労働省研究班の NIPPON DATA 研究(研究代表者:滋賀医科大学三浦克之教授)より、正規雇用の男性職員・従業員において、小企業勤務の人は大企業・官公庁と比べて循環器疾患死亡リスクが高いことが明らかになりました。本学健康栄養学科 奥田奈賀子教授が執筆した本論文が、日本循環器学会の学会誌 「Circulation Journal」電子版で公開されました。
POINT
  • 厚生省(現厚生労働省)が 1990 年に実施した第 4 次循環器疾患基礎調査への参加者のうち、調査当時 30 ~ 59 歳であった男性 2091 人(無職と非正規雇用の者を除く)を解析しました。
  • 調査当時の就業状況を、正規雇用の職員・従業員(大企業または官公庁、中企業、小企業に勤務)、企 業団体役員・自営業に分類し、調査後 20 年間の循環器疾患死亡リスクを比較しました。
  • 正規雇用従業員における解析で、大企業・官公庁に勤務していた人と比較して、小企業に勤務していた 人では、循環器疾患死亡リスクが 2.53 倍に上昇していました。
  • 正規雇用従業員と企業団体役員・自営業の比較では、循環器疾患死亡リスクに差はありませんでした。
  • 勤務先の規模による循環器疾患死亡リスクの差を示したわが国では初めての報告です。
  • 小企業従業員では、大企業・官公庁と比較して喫煙者が多く平均血圧値が高いなど、循環器疾患リスク 因子が好ましくない状況がありました。循環器疾患予防のために、小企業従業員において、より一層の 喫煙対策、高血圧対策が重要と考えられます。

内容詳細

勤労世代の日本人男性における就業状況と循環器疾患リスクの関連:NIPPON DATA9
1990 年厚生省(現厚生労働省)実施の第4次循環器疾患基礎調査に参加した当時勤労世代の男性を対象とした追跡研究で、小企業の正規従業員では大企業または官公庁と比較して循環器疾患死亡リスクが上昇していることが明らかになった。NIPPON DATA 研究は現在、厚生労働行政推進調査事業費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣対策総合研究事業)(研究代表者:滋賀医科大学三浦克之教授)として実施されている。この論文は、研究グループの人間総合科学大学 奥田奈賀子教授が執筆し、2019 年 5 月 16 日に日本循環器学会の学会誌「Circulation Journal」電子版で公開された。

(背景・目的)健康日本 21(第二次)等で「健康格差の縮小」が目標とされているが、社会経済状況の違いによる疾患リスクについてのエビデンスはわが国では少ない。本研究は勤労世代男性の就業状況と循環器疾患死亡リスクの関連を明らかにすることを目的とした。

(方法)本研究の解析対象者は、第4次循環器疾患基礎調査 (1990 年 ) における当時 30 ~ 59 歳の男性参加者のうち、無職であった者と非正規雇用にあった者を除いた 2091 名であり、1990 年から2010 年までの 20 年間追跡した。本調査は、日本全国から無作為抽出された 300 地区の一般住民を対象に実施されたものである。対象者は同年実施の国民生活基礎調査の対象者でもあったため、就業に関する情報は国民生活基礎調査への回答を用いた。対象者の就業状況を正規雇用従業員(大企業[500 人以上 ]・官公庁、中企業 [30 ~ 499 人 ]、小企業 [29 人まで ] の3分類)、企業団体役員・自営業に分類し、追跡期間中の循環器疾患(脳卒中または心臓病)による死亡リスクを比較した。

(結果)20 年間の追跡期間中に 61 名が循環器疾患で死亡した。大企業・官公庁の正規従業員を基準としたところ、年齢を調整した循環器疾患死亡リスクは、中企業従業員で 1.44 倍、小企業従業員で2.53 倍であった。正規従業員全体 (1407 名 ) と企業団体役員・自営業者(684 名)の同様の比較では、循環器疾患死亡リスクに差はなかった。
 追跡開始時の調査データでは、大企業・官公庁従業員と比較して小企業従業員では喫煙者が多く果物摂取量が少ないなど不健康な生活習慣が多く、平均血圧値は高かった。対象者の喫煙、飲酒習慣や高血圧の治療状況、食習慣などを調整した解析でも結果は同様であった。職場で行われる定期健診の受診率は、協会けんぽ(中小企業が主体)よりも組合健保(大企業が主体)や共済組合(公務員)において高いことが従来報告されている。健診結果を、生活習慣の改善や医療機関受診などの健康管理に役立てた人が大企業や官公庁勤務者に多かった可能性がある。小企業従業員において、より一層の喫煙対策や高血圧対策が重要と考えられる。

小企業の正規雇用従業員では大企業・官公庁従業員と比較して循環器疾患死亡リスクが上昇
1990 年第 4 次循環器疾患基礎調査に参加した
30 ~ 59 歳男性正規雇用従業員 (1407 人 ) の 20 年追跡結果

正規雇用従業員であった対象者の勤務先を、大企業(従業員 500 人以上)または官公庁、中企業(30 ~ 499 人)、小企業(29 人まで)に分類し、循環器疾患死亡ハザード比を算出した。ハザード比は、大企業・官公庁従業員を参照グループとして、20 年間の循環器疾患死亡リスクが何倍高いかを示している。(ハザード比は、年齢で調整した)(「*」は、統計学的に有意であることを示す)

Nagako Okuda, Aya Kadota, Nobuo Nishi, Katsuyuki Miura, Takayoshi Ohkubo, Naoko Miyagawa, Atsuhi Satoh, Yoshikuni Kita, Takehito Hayakawa, Naoyuki Takashima, Akira Fujiyoshi, Akira Okayama, Tomonori Okamura, Hirotsugu Ueshima H; NIPPON DATA90 Research Group.Association of Work Situation With Cardiovascular Disease Mortality Risk Among Working-Age Japanese Men - A 20-Year Follow-up of NIPPON DATA90.Circulation Journal. 2019 May 16. doi: 10.1253/circj.CJ-18-1067


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