心身健康科学概論 第2版


■判型 B5
■総頁 256頁
■発行 2012年03月
■定価 2,600円+税
ISBN=978-4-87738-397-8 C3047
【発行】
人間総合科学大学・HSMB Press
TEL.048(749)6111 FAX.048(749)6110
【発売】
紀伊國屋ウェブストア
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784877383978
第2版の特徴
1. 本書では、生活者のための、暮らしの中における「よりよく生きるための知恵("Knowledge for well-being")」を創造するさまざまなアプローチを展開。第2版では、脳、こころの健康、ストレス、食、免疫力など、現代人の関心の高いテーマが充実。
2. 世界中の人々が、今後抱えるであろう、現代人の「健康問題」を統合的に扱う、医療教育テキストとして最適。第2版では、心身の健康に関するKeyWord(重要語)を追加し、学習者にとって利便性の高い構成となっている。
3. 現代日本において蓄積された、最新の心身健康科学のエキスを集約。「こころ」と「からだ」に関して世界トップクラスの研究者・専門家である人間総合科学大学教授陣が総力をあげて執筆・編集。
私たちが推薦します
福岡伸一(分子生物学者。青山学院大学 総合文化政策学部教授)

生命を一貫して関係性の視点から説き起こした好著である。
生命をモノとして見ると、タンパク質分子などミクロな部品の集合体となり、精密機械とみなすことができる。還元論的な近代科学はずっとそう考えてきた。しかし私はここにひとつの隘路を感じる。生命を現象として見ると、それは動的平衡であると捉えなおすことができるからである。動的平衡とは、絶え間のない動き―たとえば構成要素の合成と分解、内部と外部とのあいだにおける物質・エネルギー・情報の移動や交換―のさなかにあるにも関わらず、全体として一定の秩序、均衡あるいは恒常性が保たれる状態である。動的平衡であるがゆえに生命は可変的で、適応的で、回復力を持ち、強靭であることができる。
なぜ動的に更新されているにも関わらず、生命は一定の平衡を保てるのか。それは生命を構成する要素が互いに相補的な関係を維持しつつ更新されているからである。だから動的平衡を考えるとき一番重要なのは関係性の問題である。
本書は、生命を一貫して関係性の視点から説き起こした好著である。心と身体、自己と非自己(免疫系)、栄養、新陳代謝、神経系・・・生命現象はすべて動的平衡に支えられており、そこには必ず要素間やしくみのあいだに関係性の問題がある。生命と文化・倫理の関係に言及している点もすばらしい。
日野原重明(聖路加国際病院名誉院長)

私たち人間が「生きがい」を得るために必要なエッセンスである。
人間には、本来的にどんな試練にも立ち向かう力が備わっている。だからどんな環境にあっても、どんな健康状態にあっても「生きがい」を実感することができる。本書に提唱されている「よりよく生きるための知恵(Knowledge for well-being)」とは、私たち人間が「生きがい」を得るために必要なエッセンスである。
上村洸(東京理科大学特別顧問、東京理科大学名誉教授、東京大学名誉教授)

現代の健康課題である心身の健康問題を解決する科学的アプローチを学ぶことができるだろう。
21世紀になって、科学は驚くべきスピードで、既存の学問分野の枠を超えて発展している。このことを考えると、個々の科学的成果がより大きな全体に、どの様に発現していくかを広い視野から常に考えることが大切であろう。
そのような考え方を、「ホリスティック・アプローチ」と呼ぶが、心身健康科学は、人間のこころと身体の相関を軸に、「ホリスティック・アプローチ」によって、「生命」「健康」「人類」を学際横断的に研究し、人間の全体像の把握を目指す新しい学問領域である。本書を読むことで、現代の健康課題である心身の健康問題を解決する科学的アプローチを学ぶことができるだろう。
ドナルド・ラウダ(カリフォルニア大学ロングビーチ校名誉学長)

本書は、人々が生涯健康を達成するため、世界の潮流が統合医学へ向かっているという時代の流れを現している。
人間総合科学大学の久住学長と知り合って15年になる。生涯健康そして心身相関への彼女の熱意にはいつも感銘を受ける。心身健康科学概論は、彼女の哲学と生涯健康および健康課題に関する見方を統合し、よりよく生きるための知恵を生み出している。
本書12人の執筆者は、人々が生涯健康を達成するため、世界の潮流が統合医学へ向かっているという時代の流れを現している。本書で示される研究について優れた記述がなされており、久住学長の洞察力や先見性は称賛に値する。
本書は、健康管理について、自立性を強調した斬新な見方を提供し、久住学長の提唱する“Knowledge for well-being”が一貫して主張されている。心身健康科学概論は私たちの基礎知識に寄与し、広く読まれることであろう。
ブルース・マキューエン(ロックフェラー大学教授 神経内分泌学研究所所長)

次世代の日本の市民にとって大きな効果を与えるだけでなく、その他の国へと広がり、世界中に普及していくことが期待される。
急激に早まる時代の流れと混沌とした世界の中で、ストレス体験、そしてストレスによるこころとからだへの影響は、多くの人々にとって中心的な関心事であり、それは身体と精神の健康を維持する課題を伴っている。死、離婚、失業など主要な人生の出来事に加えて、ストレス関連要因としては、家庭不和、通勤・仕事、対人関係、経済的不安、またメディアに映し出される暴力などから生じる刺激が含まれる。
さらに、児童虐待や育児放棄の問題は貧困に限られた要因ではなく、それは親自身の問題の反映であることが多い。幼少期の不幸な出来事は、生涯に渡って心身の健康に影響を及ぼすが、幼少期の介入は、親と子どもにポジティブな相互作用を促し、個人と社会にとって効果的かつ長期的な利益をもたらす。
“Well-beingセラピー”の考えに体現されているように、これらの心配に対処し、次世代の市民と積極健康の助けとなる専門家を教育することが、人間総合科学大学および大学院の中心的なミッションである。学長の久住眞理氏によると、「私たちは、人間の健康と幸福を支援する人材を育成するという使命を持ち、自立できる学生を育む教育環境を目指し、心身健康科学を通して自立と共生の心を育むことを大学のミッションとして掲げています」とある。そのミッションを達成するため、大学および大学院で「心身健康科学概論」の教科書を使用し、教育プログラムを発展させてきた。 人間総合科学大学の理念が反映された本書のアプローチはホリスティックである。人間を部分的でなく、全人的に捉え、生物・心理・社会的な視点を含み、また健康と病気に関して社会的環境と対人関係の役割を強調した統合的な見方をしている。本書の特徴的な部分は、脳の代わりに“こころ”が使用されていることである。というのも、“こころ”は感情や個体の感覚、そしてストレスに反応し対処する、中心的で必須の役割を担っている神経システムを含んでいるからである。さらに、心身の相互作用に関するホリスティックな見方は、“アロスタシス”や“アロスタティック負荷”の概念に体現されている、コルチゾン、アドレナリン、炎症性サイトカインのようなホルモンを含む、身体や脳のストレスと適応における生化学的ネットワークの保護的で破壊的な活動を認めている。
本書の第Ⅱ章「心身相関の基礎」では、脳と身体の相互作用、脳の発生と脳の成長、脳とこころの健康における基本的機能が体系的かつ詳細に述べられている。第Ⅲ章「心身の相関性を理解する」では、こころとからだの免疫学、栄養と食の効能、乳幼児のこころとからだの共感的コミュニケーション、サクセスフル・エイジング、女性のライフサイクルの節が含まれている。第Ⅳ章「心身健康科学の展開」では、メンタルヘルスマネジメント、ヘルスプロモーション、DNAの時代に連なる生物医学の歴史と進化、さらに遺伝子操作の可能性と生命倫理についての議論が展開される。
本書の執筆者は、心理学、神経科学、内分泌学、生化学、薬理学、その他生物医学の側面において経験とキャリアを持つ教師であり研究者である。大学の学長であり監修の久住眞理氏は、医学博士・臨床心理学修士を持ち、日本心身健康科学会理事長である。
心身健康科学概論は、人間総合科学大学・大学院の教育プログラムの中で中心的な位置を占め、働きながら学ぶ通信制の学生(心身健康科学科)や、健康栄養学科、保健医療学部の学生の必須科目となっている。
この興味深い教育プログラムが、次世代の日本の市民にとって大きな効果を与えるだけでなく、その他の国へと広がり、世界中に普及していくことが期待される。
序文
――心身健康科学シリーズとは
21世紀が「こころの時代」といわれるようになって久しい。私たちが健康を考える場合にも「心」の部分が大きく取り上げられるようになった。心身健康科学 は、この人間の心と身体の有機的な関連性に着目し、その心身相関が示す諸現象を科学的・理論的・実証的に体系づけ、人間の健康を総体的に考究するこ とを目的としている。従来の健康科学といわれる領域に加えて生命科学、行動科学、ストレス科学、心身医学、基礎医学、生命倫理学、文明科学など、多様な領 域を総合的に俯瞰・統合して、人間の「こころ」と「からだ」の相関性、及び生命現象のメカニズムを解明しようとするものである。
現在の先進国や、今後新興国が迎えることになる長寿社会にあって、" 生涯健康" の重要度は高まりつつある。「心」「身体」の健康について科学的な根拠 に基づく健康施策・医療措置が求められ、また同時に、科学技術は精神の解明へ向かおうとしている。物質から生命の解明の時代を経て、心の解明が科学 の対象となり、心身の健康を基礎の置き、実生活を視野にいれた科学のあり方が時代の要請となっている。
本シリーズでは、心身健康科学の視点から、現代の健康課題や心身の健康問題を科学的なアプローチによって解決することを目指し、さまざまな領域の 知見を横断的にまとめている。本シリーズが、生活者の心身の健康増進の活動に寄与し、将来の人類の幸福を追求する一助となることを求めるものである。
目次
口絵カラ-
序文
はじめに
第Ⅰ章 心身健康科学のめざすもの………久住眞理
第1節 現代社会と心身健康科学
第2節 心身健康科学のめざすもの
第Ⅱ章 心身相関の基礎
第1節 こころとからだを繋ぐメカニズムの基礎………鈴木はる江
第2節 脳の発生と脳の成長………新井康允・小岩信義
第3節 脳とこころと健康………久住 武・小岩信義
第Ⅲ章 心身の相関性を理解する
第1節 こころとからだの免疫学………藤田紘一郎
第2節 栄養と食からみたこころ・脳・からだ………小林修平
第3節 乳幼児のこころとからだと共感的コミュニケーション………久住武・小岩信義
第4節 こころとからだの老化とサクセスフルエイジング………近藤 昊
第5節 女性のライフサイクルと心身の健康………佐藤優子
第Ⅳ章 心身健康科学の展開
第1節 メンタルヘルスマネジメントと心身健康科学………筒井末春
第2節 ヘルスプロモーションと心身健康科学………川口 毅
第3節 生命文化と心身健康科学………青木 清
終章 心身健康科学の展望―体系化から一般化へ………久住眞理