心身健康科学の研究手法

対象とする学際的な学問領域

心身健康科学はこれまでの健康科学の枠を踏み越え、発達科学、生理学、医学、薬学、栄養学、衛生学、疫学、教育学、福祉学、倫理学など多領域に跨る学際的な領域に加えて、より多彩な学際領域を取り込み、最終的に「心身相関」の概念を検証・考察していくことになる。さまざまな学際領域を横断的・総合的に統合し、その中から人間の「こころ」と「からだ」の相関性、および生命現象のメカニズムの原則と働き(相互関連性)を解明し、人間の健康の保持増進に応用していく研究・教育活動を行っている。

俯瞰統合的な取り組み

心身健康科学の対象とする「健康」領域でも、個人のみならず、地域・社会・地球規模の人類共通の健康問題が数多く存在し、その解決にあたっては、健康科学をはじめとする医療・福祉・公衆衛生・基礎医学・精神医学・生命科学などから、脳科学・心理学・人類学・社会学・進化学・生物学などにいたるまで、幅広い範囲の学問領域間を架橋する体系が必要とされている。同時に、心身健康科学の提唱する「こころとからだの有機的関連性」という考え方は、「共生」や「共存」あるいは「調和」や「共認」を基軸とする人類生存の新たなシステム論を確立するうえでも重要不可欠な概念となる。そのためには、人間諸科学を統合する俯瞰統合的な取り組みが必要である。

メタサイエンス(Meta-Science)に基づく研究手法

メタサイエンスとは、1つの研究成果だけでは読み取れなかった重要な関係性や要因を、さまざまな研究を比較検討し統合することで明確にしていく手法である。また、過去の研究の相互比較を通じて新機軸の視点を発見し、以後の研究の方向性を提示することもまた、重要な目標としている。

 心身健康科学においても、健康という個人・地域・人種・民族など層の異なるデータ(研究成果)や、一人ひとりの年代・価値観・ライフスタイル・人間関係など相の異なるデータ(研究成果)から、さらには多様な研究領域からの先行研究を検証しながら、客観的・統合的な結論を見いだす必要がある。そのために、新たな統合化のための研究手法の開発が行われている。

ホリスティック・アプローチの実践

心身健康科学において、ホリスティック・アプローチは重要な研究アプローチ法である。その概要は下記のとおりである。心身健康科学では、まず「こころ」と「からだ」の有機的な繋がりに着目することで、人間および健康を捉えるために、あらゆる科学的手法を応用する。また、最先端の科学技術として、心身相関に関する科学的な知見が集積されつつあるライフサイエンスは、心身健康科学の重要な研究分野である。最先端の、生命科学、遺伝学、免疫学、脳科学などの研究成果から人々のwell-beingの方策を検討していくことは心身健康科学の重要な研究テーマとなっている。

 さらに心身健康科学では、健康科学や老年学や女性学といった人間にかかわる学際分野からのアプローチや、宗教・芸術・環境・政治経済といった人間の営みの諸相と人間の「こころ」「からだ」との相互作用を踏まえたアプローチから、現在、人間の生命の根源的な側面に迫る新たな領域が提示できると考える。

 心身健康科学の、「全人的心身健康モデル」は、このような広範なアプローチから、各ライフステージでの健康問題の解決を図っていくための理論的基盤となる。

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