おいしく楽しく心を満たす朝食

今回は、玉木雅子先生のご登場です。先生のご専門は「食品学」です。本学健康栄養学科で「食品学総論」、「食品学各論」、「食品化学」、「食品化学実験」を担当してくださっています。これまで食品の貯蔵や加工特性についての研究をしてこられましたが、最近では、高校生の健康教育や、地域の食文化への取り組みを始められたとのことです。家庭での食事が家族の健康管理にいかに重要か、毎日の生活を振り返りながら、一緒に考えましょう。

玉木雅子先生

 「おいしい」「楽しい」「健康的」が全てととのった朝食、あるいは食事は成立するでしょうか?「おいしい」と感じるためには、実際に味が良いことに加え、香りや口あたり、見た目が好ましいこと、周囲の環境が快適であることなど、さまざまな要因が必要です。だから「楽しい」なら、「おいしい」と感じることができるでしょう。では、「おいしい」と「健康的」はどうでしょうか?私たちは、心と体の両方が満たされたときに、「健康である」と感じることができます。おいしく楽しい食生活は、私たちの心を満たし、栄養バランスの優れた食事は健康的な体をつくります。


 心の快楽にかたより、栄養バランスを軽視した食生活を続け、好きなものだけを食べていれば、心と体の健康を損なう危険性が高まります。「健康的」な食事を「おいしい」と感じることのできる感覚が身につけば、「おいしく」「楽しく」「健康的」な食事を簡単に実現することができます。本来動物は、不足する栄養素を補おうとする本能を持っています。普段からのバランスの良い食生活で、「おいしく」「楽しく」「健康的」な食事の正しい感覚を身につけましょう。


 では、家庭で適切な食事を与えさえすれば、家族は健康的でいられるのでしょうか。一般的には、母親が食事作りを担当している家庭が多いでしょう。家族の健康管理を受け持つ立場として、家族のために、適切な栄養バランスの食事を作ることは大切です。しかし、手作りの弁当を毎日持たせる場合を別として、夫や子供は、外食や給食で昼食を摂ることが多くなります。給食は栄養士により管理されていますが、子供たちが、全てのメニューを食べきっているとは限りません。専門家により管理された食事が用意されていても、それを食べずに残してしまう可能性は十分にあります。昼食だけではなく、夕食も外食で摂る機会が多いサラリーマンは少なくないでしょう。このように母親(あるいは妻)が、一日中、子供や夫の食事を見守ることは不可能です。母親の最も重要な役割は、「適切な食生活のバランス感覚を子供や夫の身につけさせること」ではないでしょうか。日々の食事を通して、適切な内容、適切な栄養バランスであるかどうかを子供や夫と一緒に考えてください。家庭によりますが、朝食は比較的、家族がそろいやすい機会です。目の前の食事について、楽しく会話をしましょう。完璧を目指す必要はありません。「今朝は野菜が少ないから、晩御飯で沢山食べようね」という日があっても良いと思います。


 バランスの良い食生活を気軽に考えるためのツールに「食事バランスガイド」があります。一日に必要な食事内容を献立で考えることができます。食材や栄養素の知識をもたない子供や夫でも自分の食事を評価することができる簡単で便利なツールですが、欠点もあります。パンに塗るバターやジャム、野菜サラダにかけるドレッシング、調理で使用する油や調味料を見落とし、見えない油やエネルギー、食塩の過剰摂取を引き起こす可能性があるのです。また、食事バランスガイドに示されているのは一日に摂取すべき食事の構成です。食品素材、調味料、調理方法が偏らないように注意をして薄味を心がけ、1日に摂取する主食、副菜、主菜の量を朝昼晩にバランスよく分配することで、その欠点を補うことができます。食事バランスガイドを参考にして、食事の基本が「主食・主菜・副菜・汁物(+果物・乳製品)」であることを改めて確認しましょう。これらの栄養バランスのよい献立が揃う食生活を心がけ、どれかが不足したときに、それが認識できる感覚を家族に持たせることができれば、健康な体づくりのために、とても素晴らしいことだと思います。


 忙しい生活の日々、毎回、手の込んだ調理は必要ありません。ライフサイクルによって、食事のために時間をかけられる曜日や時間帯はことなります。忙しい朝食は効率よく済ませたい人が多いでしょう。調理方法や食材を工夫し、簡単でも、献立の揃った栄養バランスの良い食事を心がけましょう。もちろん時間と気持ちに余裕があるときには、手の込んだ調理や、食事を家族と一緒に楽しみ、夫や子供たちの笑顔をみながら、心も体も満足する贅沢な時間を過ごして頂きたいと思います。


執筆担当:健康栄養学科講師 玉木雅子

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