頭痛、肩こり、偏頭痛・・・顎関節症!

今回は本学教授の島田凉子先生です。島田先生は臨床心理学、なかでも、交流分析と精神分析がご専門です。人の心の内面について、そしてまた、人と人との相互交流について、常に深い眼差しを向けられています。

島田凉子先生

 私は生来の凝り性で、頭痛持ちです。肩こりは中学生の頃から、頭痛は高校時代からのお付き合いになるでしょうか。数年前には、持病リストに偏頭痛も加わりました。


 なので、以前井上ひさし氏による『頭痛肩こり樋口一葉』という舞台のタイトルを見たときは、「ああ、樋口一葉も私と同じ持病だったか・・・」と妙に嬉しかったり、教科書で見た暗そうな部屋で目を細めて針仕事をしている樋口一葉の挿絵とともに、生活苦や師匠半井桃水への叶わぬ恋の物語などを思い出し、そりゃあ肩も凝るわ、頭も痛いわ・・・と同情したものでした。


 昨年暮れの或る晩、突然頭部の飛び上がるほどの激痛で目が覚めました。場所は頭から顎にかけての左半分のどこかですが、特定できず、歯?耳?頚?頭?と考えながら、そのままでは眠れそうもないので、頭痛薬を飲みに寝室を出ました。起き上がって服薬し寝室まで歩いて帰るうちに痛みは少しだけ薄らぎました。しかし、横になってうとうとするかしないうちにまた痛みが襲い、飛び起きるのです。身体を立てていると少し楽な気がするのですが、壁にもたれては眠れず横になると激痛に。そんな繰り返しでほとんど眠れないままようやく朝を迎え、すぐにかかりつけの歯科医を受診しました。すると虫歯ではなく、「顎関節症か?」とのことで、顎関節症専門外来のある大学病院を紹介されました。痛み止めを飲みながら数日をなんとかやり過ごし受診すると、はたして「顎関節症」のどうやら私は典型例。何十年も習慣的持続的に左顎に力を入れていたため顎の関節が削れ、顎を開け閉めする筋肉の疲労が蓄積されており、そこへ強いストレスがかかって発症の引き金となったらしいです。ともかく顎を弛めることが必要。「ああ、だから横になると顎が噛み合わさって痛み、立ち上がると重力で顎が下がるから自然と弛んで痛みがうすらいだんですね!?食べたり喋ったりしているときにむしろ楽なのは?」「顎を動かす筋肉に溜まった痛み物質が押し流されるから痛みがやわらぐのです。」「でも筋肉痛であんな激痛になるんですか?」「なるんです。」「でも就寝中に痛んだのは?」「筋肉の緊張が解けないまま休んでいるのでしょう。寝る直前までパソコンに向かっていませんか?」「!」そんなふうに医師は私の訴えや質問にひとつひとつ頷きながら応えてくれました。なんと安心したことでしょう。その先生の顔が仏様に見えました。「治療法は認知行動療法です。ご専門かも知れませんが(笑)。パソコンのモニター画面に‘歯を噛みしめない’と書いた付箋を貼ってください。しばらくは筋肉を緩めるために抗不安薬か筋弛緩剤を服用し、噛み締めない癖をつけるために一定期間マウスピースをはめ、毎日入浴時に顎を大きく開く練習をしてください。」その日から口をめいっぱい開く練習をし、就寝直前までパソコンを睨んでいることをやめ、顎を緩めることを心がけて過ごすようになりました。気づいたことは、考え事をしているときはいつも顎に力が入っていること;頸を傾げる癖があること;パソコンの画面を眺めるときはすぐに左手で頬杖をつく癖があること;ストレスがかかるとその晩は顎、こめかみ、首や後頭部がものすごく凝って痛いということ。


 この年齢になると誰しもいろんな病を得るもの。無病ならぬ、一病息災と言うこともあるように、「得た」ものとしての性格や病気をどうコントロールし統合して生きていくかというのが重要になってきます。今回の最大の収穫は、ちゃんと聴いてもらえて痛み(痛いということを)を否定せずそのまま受けとめ理解してもらえることがどれほど嬉しいか、そして説明してもらえることでどれほど安心するかということを身をもって知ったということでした。私たち心理療法家はクライエントの痛みを実際に経験したことはなくても、たとえ理解しきれるものではないとしても、懸命に聴くことで少しでもクライエントの感じていることに近づきその痛みをわかろうとします。耳を傾ける、ひたすら聴くことの意味を体験的に理解する機会となりました。


執筆担当:人間科学科教授 島田凉子

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