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第17話:ライフスタイルとがん予防

 がん予防は、私たち誰もが関心を持つ健康管理のお話です。今回は、本学教授 星山先生に、やさしい「がんの一次予防」のお話をうかがいました。先生は、公衆衛生学がご専門で、がんや花粉症などの疫学を中心とした研究者です。本学では、健康科学論、保健学、高齢化社会と福祉・医療などの講義を担当されていますが、東京都花粉症対策委員などもお勤めで、ご多忙な毎日をエネルギッシュに務めておられます。

人間科学科 星山 佳治  がんに罹らないようにすることをがんの一次予防といいます。では、本当にがんに罹らないようにすることは可能なのでしょうか。これについては、移民の研究が一つのヒントを与えてくれます。宮城県からハワイへ移住した人たちを追跡調査したところ、胃がんの死亡率が、徐々にハワイの白人のそれに近づいていくことが観察されました。この研究の結果、環境が変われば、がんの罹患率も変化するという重要な手がかりが得られました。がんの一次予防の可能性が見えてきたわけです。
 これとは別に、世界には食道がんの罹患率の高いところがあります。フランスのボルドー地域、ロシアでウォッカを飲む地域、日本では焼酎泡盛を飲む沖縄です。大量飲酒や強い酒を飲むことは、食道がんの罹患率に大きな影響を与えているようです。
 また、喫煙すると肺の扁平上皮がんに罹患する危険性が数倍程度高くなることは、周知の事実ですね。
 食習慣についても多くの研究が行われてきました。このうち、日本人にとって重要なことは、塩分摂取です。日本食、特にご飯との相性が抜群にいいのが塩分です。したがってこれの取り過ぎが問題になるわけですが、特に塩分高濃度は、ほぼ確実な胃がんのリスクなのです。濃い味付けには注意したいものです。
 一方、がんを予防する因子についてもいくつか分かってきました。野菜と果物の摂取です。ほとんどのがんに関して、この2つは予防的に働きます。
 このような知見に基づいて考えてみると、どのがんにも罹りにくいライフスタイルというものがあるのではないでしょうか。
 現在までのがん疫学研究の結果から言えることをまとめてみますと、
 ①たばこを吸わない。
 ②塩分高濃度を避ける。
 ③野菜を摂る。
 ④果物を摂る。
 ⑤アルコールは飲まないか、適度に飲む。
 以上の5つを実行すると、がん予防60%が達成できると考えられます。残りの部分は、年に1回程度のがん検診を受けることです。

 最後に、最近、筆者らが行った緑茶の胃がん予防効果に関する研究を紹介しておきたいと思います。日本では、緑茶は古くから飲用されています。手軽に飲めるため、多くの人が愛飲しています。この緑茶に胃がん予防効果がもしあるとすれば、大変便利ながん予防の方法といえるでしょう。
 緑茶が胃がん予防に効果があると言われだしたのは、ここ十数年のことです。1988年に古野らは、北九州で胃がんのcase control studyを行い、1日10杯以上の緑茶の飲用が、胃がんに予防的であると報告しました。その後、動物実験でもこれを支持する結果が出てきたため、さらにいくつかの研究が行われました。その中には緑茶が予防的とする報告もありましたが、そうでないものもありました。そこで筆者らは、日本全国を対象にして、1日に緑茶を10杯以上飲むと胃がん予防効果が見られるかどうか検討しました。その結果、男性では効果は見られませんでしたが、女性では胃がん死亡が30%減少することが観察されました。この減少効果は、統計的には有意になりませんでしたので、確実とは言えませんが、可能性があると考えていいと思います。
 なお、その後、国立がんセンターの研究グループが同様の研究を行い、男性には効果が見られなかったが、女性では有意な効果が見られたと発表しています。

執筆担当:教授 星山 佳治先生









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