トップページ > 学生生活 > キャンパスだより > 心と身体の健康メモ > 第1話:油脂と健康
第一話は、『エコナ』や『ヘルシア』の開発にもかかわられた、健康栄養学科教授の島﨑弘幸先生がご担当くださいました。
最近、メタボリックシンドロームという言葉が話題になっています。中高年で見られるメタボの原因は肥満だと言われ、極端に油脂の摂取を嫌う方を見かけます。また若い女性の多くは、スリムな体型を理想として、毎日の食事にも、油を食べないように注意しているようです。サプリメントを中心に、毎日、食事制限しているなんて、とんでもない間違いです。"あぶら"は必要な栄養素ですから。
むかし・・・19世紀の頃ですが、栄養学者の間では、脂肪は必須栄養素だとは考えられていませんでした。たとえば豚に、脂肪を含まない食餌を与えても、たんぱく質や糖質を十分に与えれば、豚は体内に脂肪を蓄えたからです。しかし20世紀に入って、そのことは否定されました。脂肪は必要な栄養素だったのです。1930年頃ですが、ミネソタ大学のブル(Burr)夫妻が、動物の体ではつくることのできない、いわゆる必須脂肪酸を発見しました。それらの必須脂肪酸は、植物油やお肉(赤身)に含まれています。植物油やお肉を全く食べない人は、肌荒れや健康障害を起こす恐れがあります。また小児では成長障害が起こるでしょう。1970年代に入って、その他にも身体の調節作用や、脳の神経活動に必要な必須脂肪酸のあることが分かりました。それらは、お魚や魚油で補うことができます。このようなことから、いまでは、私達はてんぷら油やサラダ油のような植物油、肉、あるいはお魚など、いろいろな食品から、いろいろな油脂を食べることが大切だと考えられています。
テレビや、雑誌のコマーシャルで、「ジアシルグリセロール」や「中鎖脂肪酸」、あるいは「植物ステロール」の入った油が、しばしば宣伝されています。「あれって、本当に効果があるのですか?」といった質問を良く受けるのですが、私は「お薬のような効果を期待するとしたら、間違いでしょう」とお答えしています。食品ですから、お医者さんの処方するお薬のような効果は無いでしょう。しかし、食生活の改善という視点からでしたら、上手に利用するのは良いことだと思います。
トランス脂肪酸も、雑誌や新聞などの報道から、とても怖いイメージを持つ方がいるかも知れませんが、実は、牛乳を飲み始めた頃から、私達はトランス脂肪酸を食べ続けています。反芻動物の胃内細菌でトランス脂肪酸は、わずかですが作られるのです。またマーガリンを食べ初めて何十年になるでしょうか?その間も私達は加工の過程で生じるトランス脂肪酸を食べ続けてきました。欧米に比べ、日本人の食生活で利用する油脂に含まれるトランス脂肪酸の量はわずかであり、その量で健康障害を起こすとは考えられない・・・というのが、厚生労働省(食品安全委員会2007年6月)の結論です。
執筆担当:健康栄養学科教授 島﨑弘幸